軟弱地盤上で盛土や構造物を施工する場合、施工後にどのくらい沈下するのか、また沈下がどの時期に落ち着きそうなのかを把握することが重要です。
その沈下予測の方法のひとつに、双曲線法があります。
双曲線法は、地盤沈下の実測値をもとに、将来の沈下量を近似的に予測する方法です。
この記事では、双曲線法の基本的な考え方、計算の流れ、Excelで計算するときの使い方をできるだけわかりやすく整理します。
記事の後半では、簡易的に計算できるExcelテンプレートも共有しています。
双曲線法とは?
双曲線法とは、地盤沈下を予測するための経験的な計算方法のひとつです。
理論式から厳密に沈下量を求めるというよりも、実際に観測された沈下データをもとに、将来の沈下傾向を近似する方法です。
考え方としては、次のようなイメージです。
地盤沈下は、施工直後は比較的大きく進みます。
しかし、時間が経つにつれて沈下速度は少しずつ小さくなっていきます。
双曲線法では、この沈下速度の変化を双曲線的に表せると仮定して、将来の沈下量を予測します。

この方法を使うことで、主に次のようなことを確認できます。
- 最終的にどのくらい沈下しそうか
- 目標沈下量に達するまで、どのくらい日数がかかりそうか
- 現在の沈下が、収束に向かっているのかどうか
現場では、沈下板などで観測した実測値をもとに、盛土の管理やサーチャージ撤去時期の判断などに使われることがあります。
双曲線法に必要なデータ
双曲線法で沈下予測を行うには、まず沈下量の実測データが必要です。
たとえば、次のようなデータです。
- 測定日
- 初期時点からの経過日数
- 各時点での沈下量
※注意点として、観測期間が短すぎると予測精度は下がりやすくなります。
特に観測開始直後は、施工条件や測定誤差などの影響でデータがばらつきやすいため、できれば数か月分の実測データを用意してから予測するのが望ましいです。
1か月程度のデータでも計算自体はできますが、あくまで簡易的な目安として扱うのがよいと思います。
双曲線法で使う式
双曲線法では、沈下量を次の式で表します。

ここで、それぞれの記号の意味は次のとおりです。
St:時間tにおける沈下量
S0:初期時点の沈下量
t:初期時点からの経過時間
α、β:実測データから求める係数
式だけを見ると少し難しく感じますが、考え方はシンプルです。
沈下量Stは、
初期沈下量S0に、時間経過による沈下増分を足したもの
として表されています。
つまり、実測データからαとβを求めることができれば、任意の時点における沈下量を推定できます。
αとβの求め方
双曲線法では、実測データからαとβを求めます。
そのために、先ほどの式を次のように変形します。

この式を見ると、右辺が一次式の形になっていることがわかります。
そこで、次のように置きます。

つまり、
x = t
y = t / (St – S0)
として整理します。
すると、式は次のような一次式になります。

これは、中学校や高校で学ぶ一次関数と同じ形です。
y = βx + α
つまり、横軸にx、縦軸にyをとってグラフにプロットし、近似直線を引けば、
- 直線の傾きがβ
- 直線の切片がα
として求められます。
Excelで計算する場合は、実測データからxとyを作成し、散布図を作って近似直線を表示させれば、αとβを求めることができます。
最終沈下量の求め方
双曲線法では、時間tが無限大に近づいたときの沈下量を、最終沈下量として考えます。
最終沈下量をSfとすると、次の式で求められます。

※画像内の記号は、できれば「St」ではなく「Sf」に修正するのがおすすめです。
この式から、βがわかれば最終沈下量を求めることができます。
つまり、双曲線法で重要なのは、実測データからいかに適切にβを求めるか、という点です。
βの値が変わると、予測される最終沈下量も変わります。
そのため、どの期間の観測データを使うか、ばらつきの大きいデータをそのまま使うかどうかは、予測結果に大きく影響します。
目標沈下量に達する日数の求め方
最終沈下量だけでなく、任意の沈下量に達するまでの日数も計算できます。
たとえば、
「あと何日くらいで、目標沈下量に達するのか」
「サーチャージ撤去を検討できる時期はいつ頃か」
といった目安を確認したい場合です。
手順はシンプルです。
まず、目標とする沈下量を設定します。
次に、双曲線法の式に次の値を代入します。
- 初期沈下量S0
- 目標沈下量St
- 実測データから求めたα
- 実測データから求めたβ
この式をtについて解けば、目標沈下量に達するまでの経過日数を求めることができます。
ただし、目標沈下量は最終沈下量より小さい値に設定する必要があります。
最終沈下量を超える値を目標にしても、計算上意味のある日数は求められません。
双曲線法を使うときの注意点
双曲線法は、実測データから将来の沈下を簡単に予測できる便利な方法です。
一方で、万能な方法ではありません。
特に、次のような点には注意が必要です。
観測初期のデータだけで判断しない
観測開始直後のデータは、測定誤差や施工条件の影響を受けやすく、直線関係から外れることがあります。
そのため、あまりに短期間のデータだけで最終沈下量を判断すると、予測値が大きくずれる可能性があります。
二次圧密の影響が大きい地盤では注意する
双曲線法は、主に圧密沈下の進行を簡易的に予測する方法です。
ただし、長期的な二次圧密の影響が大きい地盤では、双曲線法だけでは沈下挙動を十分に表せない場合があります。
そのような場合は、logt法など、ほかの沈下予測方法と比較しながら判断することが大切です。
計算結果は「絶対値」ではなく「判断材料」として使う
双曲線法で求めた最終沈下量や沈下日数は、あくまで実測データにもとづく予測値です。
実際の現場では、地盤条件、施工条件、排水条件、盛土履歴などによって沈下挙動は変わります。
そのため、計算結果だけで判断するのではなく、現場の観測値や設計条件とあわせて確認することが重要です。
双曲線法Excelテンプレート
双曲線法による沈下予測を簡易的に計算できるExcelテンプレートを作成しました。
実測した沈下量と経過日数を入力することで、双曲線法に必要な値を整理しやすくしています。
Excelでは、主に次のような流れで計算します。
- 経過日数tを入力する
- 各時点の沈下量Stを入力する
- t / (St – S0) を計算する
- 散布図を作成する
- 近似直線からαとβを求める
- 最終沈下量を計算する
双曲線法の考え方を理解している方であれば、すぐに使えると思います。
ダウンロードは以下から行ってください。
まとめ
双曲線法は、実測された沈下量をもとに将来の沈下量を予測する方法です。
計算の流れは、次のように整理できます。
- 沈下量の実測データを用意する
- x = t、y = t / (St – S0) として整理する
- xとyをグラフにプロットする
- 近似直線からαとβを求める
- βを使って最終沈下量を求める
- 必要に応じて、目標沈下量に達する日数を求める
数式だけを見ると難しく感じますが、Excelを使えばそれほど複雑な計算ではありません。
ただし、双曲線法はあくまで実測データにもとづく予測方法です。
観測期間が短い場合や、二次圧密の影響が大きい地盤では、予測結果にばらつきが出る可能性があります。
計算結果をそのまま絶対的な答えとして扱うのではなく、現場の沈下管理や判断のための目安として活用するのがよいと思います。


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